
立正大学法学部は、歴史ある立正大学の6番目の学部として1981年(昭和56年)に設置され、実用法学の素養を身につけた人材の育成を目標に掲げて、以来4半世紀を超える歴史の中で、多数の有為な人材を各界に輩出して参りました。時代とともに大学をとりまく環境、学生の気質が変化していく中にあっても、いたずらに華を追わず、法の知識を実際の場に活かすことのできる信頼に足る人材を育成する、という本学部の理念は今も変わらず承継されています。
近時、大学、法学部を取り巻く社会の環境は三つの側面で大きく変化し、立正大学法学部もまた例外なく大きな試練に直面しております。
第一に、司法制度の改革の一環として、弁護士、裁判官、検察官などの法曹養成教育機関である法科大学院が各地設立されました。法学部=法曹養成学部という図式が崩れたことによって、いまや「法学部」の存在意義そのものが問われています。一体、法学の素養を身につけることにどのような意味があるのか?社会の人々、とりわけ大学受験を控えた受験生のみなさんにとって当然の疑問であります。
しかし、裁判員制度がいよいよスタートし、企業の不祥事とコンプライアンス(法令順守)の必要性が日々ニュースで取り上げられることからも明らかなように、法学の素養を身につけ、公共政策の場で、あるいは企業の場で、衡平に配慮して法を使いこなし、目前の課題に対処しうる人材(よき市民)こそが現在求められております。立正大学法学部が学部設立時より一貫して掲げてきた理念は、まさにこれに合致するものであります。
第二に、少子化の時代を迎え、志望者の減少や、入学した学生の基礎学力の低下が懸念される中で、大学はこうした課題にいかに応えていくべきかが問われております。
こうした中、採るべき対応は大学によって異なりますが、本学部では「人数確保に走らず、真に意欲を持った学生を受け入れ、鍛えること」を一貫した方針として掲げて参りました。とりわけ、講義・演習・課外講座の「三段階での手作り教育」を通じて、学生が自分に合った将来の目標を見つけ、資格を得ることができるよう、教育面ではもとより経済的にも各種の支援しております。また、平成22年度からは、この方針をより進めたカリキュラム・コース制度の改編も予定しております。
禅に、「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。卵の中の雛鳥が生まれ出ようとする時、雛鳥が卵の殻を内側から突っつく(啐といいます)だけでは足りず、親鳥が外から殻を突っつく(啄といいます)ことによって、初めて殻を破ることができる、という教えです。少子化時代に大学で学ぶ学生達は、解決困難な多数の課題を抱えた日本・国際社会を支え、よき社会へと導いていく役割を担った、まさに「金の卵」です。彼らが無事に雛鳥として殻を破れるように知の技法を授け、やがて法学士としての誇りと共に逞しく社会へと羽ばたくことができるよう助力することが、最高学府としての私共の使命と心得ております。
第三に、高齢化が進み生涯教育ということがうたわれる中で、大学には、より社会・地域に開かれた知の集積場としての役割が求められております。
本学部では、学部の教員を公開講座等に派遣して最先端の研究成果を広く公開し、あるいは、社会の一線で活躍する研究者や実務家などを招聘して公開のシンポジウムを開催して、毎回多数の市民の参加、好評価を得ております。社会に密着した実用法分野の教育に重きを置く本学部の伝統が、こうした場にも息づいているものと考えております。
このように、立正大学法学部は、常に一貫した方針の下、着実に教育・研究成果を積み重ね、時代の要請にも応えて参りました。
西洋の大学の歴史は、心を癒す術(神学)、体を癒す術(医学)、そして社会を癒す術(法学)の三つの学問から始まったといわれております。人が人として社会の中で生きていくためになくてはならない法の知識と、それを使いこなす前提としての人格的素養を磨く場、まさに、立正大学の掲げる「モラリスト×エキスパート」教育を体現する場として、今後とも尽力して参りたいと考えております。